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アイドルオタク(短編小説)

僕は何を隠そうアイドルが大好きだ。

最近ハマっているのは、48人組のアイドルグループだ。

最近テレビや雑誌でも注目されてきてしまったけれど、僕は結成当時からずっとある子を応援している。

そんなに人気があるわけではない。でも、僕の中では彼女がナンバーワンなのだ。

そんなわけで今日は、初めて握手会に来ることができた。

CDを100枚も買った甲斐があって、初めて握手会のチケットをゲットできたのだ!
あこぎな商売だな~と思うけど、ファンならば一度は行っておきたいイベントだし、何せあこがれのあの子と直接握手ができる!と思えば、安いものだ。
会場と同時に、列に並ぶ。だいぶ後ろのほうになってしまったけど、しょうがないな。握手できることが重要なんだ。

しかし、と見渡して僕は思う。

(オタだらけだ・・・)

この人たちがみんなCDを死ぬほど買ってると思うとなんだか不思議な感覚だ。
後ろに並んでいる人なんか、ずっとニヤニヤ笑ってるしね。時々なぞの呪文みたいな、よくわからないことをつぶやいている。

やっと、僕の握手の順番がきた。
「これからも、応援してくださいねっ」
純粋そうな笑顔でにっこりほほ笑むと、あの子は手を差し出した。
僕はふるえながら、握手をする。
ふわっと柔らかい感触と、かすかな香水かシャンプーのいい香りがする。夢みたいだ。

やった!今日はこの手は洗えないな・・・
速やかに退場するのがファンとしてのマナーだ。他にもたくさんの人と握手をしなければならないのだから、その場にとどまってはいけない。

帰ろうとする僕の後ろで、すごい声が聞こえた。
「キャーーーーッ!」

まさか!あの子に何かあったのか?でも今聞こえた声、なんか野太かったな・・・
後ろを振り向くと、すでに人だかりができている。
人だかりをかき分け進むと、一人の男が警備員に取り押さえられ、はがいじめにされているところだった。
そうだ、あの子は!と見ると、傷一つないようで、ニヤニヤ笑ってマネージャーの後ろに立っていた。よかった、無事なんだ。

「何だ何だ?」「あいつ、興奮して襲いかかったみたいだぜ」「何てことを・・・ファンの風上にも置けないやつだな」
男のほうを見ると、取り押さえられながらも、「私の体を返して!」「本当の私はこっちなの!」などと意味不明なことを叫んでいる。
警備員に連れて行かれるまでずっと叫んでいた。ああいう気持ち悪いやつが、アイドルオタクの評判を下げているのだ。本当に自重してほしい。

あの子はといえば、涙ひとつ浮かべる様子もなく、むしろ何かうれしそうな感じすら出している。さすが、アイドルは肝が据わってるよなー。
ただ、しきりに自分の足や腕を眺めている。アザができていないかとか気にしてるんだろうな。アイドルは体が命だもんね。

結局その後は滞りなく握手会も済んで、僕は家に興奮しながら帰った。

その後、そのアイドルは結局「持病の悪化」を理由にアイドルグループを脱退してしまった。

でも、僕はそんなに落胆しなかった。
なぜなら、あの握手の後、その子のテレビでみる雰囲気が何となく変わってしまっていて、僕の興味はどんどん薄れていったからだ。
どう変わったかって?うーん、難しいし、言ってもわからないかもしれないんだけど・・・

なんとなく、歌も踊りも、「過去の記憶」を頼りにしているような感じがして、何となく気が入っていないような感じだったし。
一部のコアなファンの間では、その子のレズ疑惑も出るぐらい、他のメンバーの胸を揉んでみたり、ここでは言えないぐらいエロいことをしていたらしいし。
テレビに出てきても、インタビューはずっとニヤニヤして、よくわからないことばっかり言うようになって、僕以外のファンもどんどん離れていってしまった。

今その子は、元アイドルを売りにしてAV女優として活躍しているようだ。
男のツボを押さえた演技でかなり人気が出ているらしい。
純粋そうだったあの子にそんな一面があったなんてちょっと信じられないけど、その子が幸せならいいんじゃないかなって思う。

あの子の人生は、あの子しか決められないのだから。


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[ 2011/10/11 21:19 ] SS | TB(0) | CM(0)





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